年金生活の前に家を手離すという考え方

公的年金だけで暮らしていくためには、さまざまな分野で節約することが求められます。たとえば、持ち家を持つというのも、実は意外とコストがかかるものです。無論、老後に持ち家は絶対に必要だという考え方もあります。

将来的にいつ追い出されるかわからない不安定な賃貸住宅にいるよりも、持ち家のほうが安心はできます。ですが、その反面、持ち家にも税金などコストがかかります。固定資産税や健康保険税にかかる保険料なども、不動産などの資産があれば高くなってきます。

さらに「おひとりさま」の老後を選択してしまった人などの中には、将来的にどうしても生活保護を受けなければ食べていけないという人もいるかもしれません。生活保護を受けるためには財産をすべて処分してしまう必要があります。そういう意味でも人によっては住宅など持たない方がいいのかもしれないのです。

いずれにしても「収入のない資産」はできるだけ少なくしたうえで年金生活をはじめたいものです。たとえば、郊外の二戸建てに住んでいたライフスタイルを田舎のマンションに買い換えて暮らすといった選択肢もあるはずです。一戸建ても地価の高い都心部では固定資産税などが大変ですが、地価の安い地方であれば、かなり節約ができるはずです。

そもそも固定資産税というのは標準税率が1.4%かかります。大都市に住んでいると、そこに「都市計画税」というものが0.3%かかってきます。実際に課税される税率は市町村によって異なっていますが、概ね次のようなパターンが多いようです。

・固定資産税額……固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
・都市計画税額……固定資産税評価額×0.3%(制限税率)

固定資産税については、ほとんどの地方自治体が1.4%の税率を適用しており、そういう面では平等ですが、固定資産税の場合は課税する側の役所が勝手に「固定資産税評価額」というのを決めてしまうために、税率とはあまり関係のないところで、大きく課税されてしまう場合もあります。特に地価の高い都市部ではびっくりするような高い土地評価額になって高い固定資産税を負担しなければならないケースもあります。

ただし、住宅用地には「軽減税率」が適用され、床面積が200㎡までの部分は6分の1、都市計画税は3分の1、200㎡超の部分は3分の1になります。また、建物の固定資産税にも居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であれば2分の1の軽減税率になります。

たいした金額ではないだろうと思っていると、今後インフレになったときに固定資産税や都市計画税が重石になるケースも十分にあります。なお、同一の区市町村内で同一の人が所有する土地や建物の課税標準額合計が一定の金額に満たない場合には固定資産税と都市計画税は課税されません。免税点は次の通り。この評価額未満なら税金はかかりません。

・土地……30万円
・家屋……20万円

東京都西東京市に住むMさん(63歳)は年金生活に入る5年ほど前に家を建て直しして年金生活の準備をしました。60歳になって厚生年金の報酬比例部分を受け取れることになりましたが、会社員勤めは22年間ほどで、残りは自営業をやっていたために年金の受け取り額は月額換算で5万円程度、年額で60万円にしかなりません。64歳になれば基礎年金部分が加算されてもう少し増えますが、それでも12万円程度です。

「家は一括払いで建てたためにローンはありません。ただ、予想外だったのは固定資産税です。家を新築したことで大幅にアップして年間18万円にもなりました。ここに健康保険税が年間7万円程度。合計して23万円にもなったんです。これだけで年金の3分の1が消えてしまいました」(Mさん)

こうした健康保険税や固定資産税というのは、いわゆる「非消費支出」に該当するもので、おさえることができない出費といえます。Mさんの場合、65歳になれば基礎年金部分ももらえることになり、年間で最高額79万円ほどが加算されますから、年間140万円、月額11万6,000円程度の年金受給者になれるわけですが、その頃には固定資産税も値上がりしている可能性があります。家は年月の経過とともに固定資産税は減額されていくものの、土地価格は逆に上昇していく可能性もあるからです。

固定資産税評価額は3年に一度の見直しで、しかも一定の制限があるので大きくは上昇しません。しかし、長い老後の中ではバカにできない。やはり、年金開始直前に家を建て直すのは気持ちはわかりますが得策ではないかもしれません。固定資産税がアップしない「リフォーム」で処理するという方法もあったはずです。

— posted by 古川 at 04:50 pm  

「買う」「持つ」「売る」の投資信託の手数料の比較検討を!

手数料は必ずチェック!

投資信託は数万円で分散投資ができるため、投資ビギナーや20代、30代に人気があります。一方、中級者、上級者の中には投資信託は手数料が高いから株式投資の方が魅力的という人もいます。投信、株式それぞれにメリット、デメリットがありますが、ここ数年投資信託の手数料が上昇傾向にあることは意外に知られていません。

手数料は運用による収益を目減りさせるものですから、正しい知識とチェック能力を身につけることは欠かせないのですが、この点はビギナーが見落としがちですので、詳しく見てみましょう。投信の手数料は3つあります。

1.買うときに掛かる手数料は「販売手数料」と言って、投信を買った証券会社や銀行などが受け取ります。購入時だけに掛かるのでファンクラブなどの「入会金」のようなものと考えるといいでしょう。

2.保有している期間中に掛かる手数料「信託報酬」と言って、投信の運用や管理などに掛かる費用で運用資産から毎日引かれます。「年会費」のようなイメージです。投信を運用する会社と販売する会社とお金を預かる信託銀行の3社で分けます。

3.解約する時に掛かる手数料は「信託財産留保額」と言います。ちょっと難しい言葉ですが、要は「解約手数料」のことです。解約時に発生する株などの売却にかかる費用は解約する人が負担しましょうという考え方で、その投資信託に残されるお金です。「退会金」のようなものです。

「販売手数料」と「信託財産留保額」は「掛かる投信」「掛からない投信」があります。この2つが無料でも信託報酬が高いと結果としてコスト高になるケースもありますから3つのコストをチェックすることが大切です。

「手数料の法則」を覚えておくと比較検討の際に便利です。通常は「株式型」の方が「債券型」より高めです。市場平均を上回る運用成績を目指す「アクティブ型」の方が日経平均株価など市場平均を表す指標とほぼ同じ動きをする「インデックス型」より高めです。また、投資先が国内か海外かで比較すると、一般的に海外に投資するタイプの方がコスト高となることも知っておきましょう。

手数料チェックは、同じカテゴリーの投信で比較するのがポイントです。「投資信託協会」のホームページなら同じカテゴリーの投信のコストを一覧で見ることができ便利です。日本株のインデックス型とアクティブ型の手数料の現状をまとめたものです。アクティブ型は販売手数料も信託報酬もインデックス型より高めな上、手数料の幅も大きいことが分かります。

新興国ファンドの購入は少し慣れてから

3つの手数料のうち値上がり率が高いのは信託報酬で「BRICS」と称されるブラジル、ロシア、インド、中国などの新興国ファンドが増えたことが一因とあります。確かにインドや中国に投資するファンドの信託報酬は1.6%~2.1%と高めです。経済成長が期待できる新興国投資は人気を集めていますが、過去のリターンだけでなく手数料チェックも忘れないようにしましょう。

投信ビギナーの最初の1本目は手数料が安くて値動きの要因を理解しやすい日本株インデックス型がお勧めです。リスク、リターン、手数料の全てが高い新興国ファンドは投信に少し慣れてから2本目以降の選択肢として考えましょう。

— posted by 古川 at 03:48 pm