ナスはしぎ焼きにしても、みそ昧仕立てに煮込んでも、とてもおいしくいただける野菜です。「こんなおいしい野菜を嫁に食べさせるなとは何とひどい嫁いびりだ」と思われる方もいらっしやるでしょう。このことわざについてはいくつかの説があり、どれが正しいとは決めるのがむずかしいようです。
嫁をしいたげて意地悪く「味のよいナスなど食べさせるものか」とナスのうま味をたたえたとするのがまず第一の解釈です。盛夏をすぎて気候が少し涼しくなると、皮の色もよくなり糖分か増えて味がよくなるのです。それで秋ナスはとてもおいしく、「末の初もの」ということわざも当てはまるくらいなのです。
旬とされている時期の終わりに採れるものは、初ものと同じくらいにおいしいものが多くあるのです。秋ナスは夏のものに比べると、いくぶん小形になりますか確かに味のいいものです。ことわざの二番目の解釈としては、嫁を思いやったものとする説があります。これは今述べたのと正反対の受け取め方です。
秋ナスは本当に味のいいものですが、ナスを多量に食べると体が冷えるということが昔からいわれています。また実験によっても裏づけされています。でも、これはあくまでも多量に食べた場合のことで、ご自宅の食卓の上に並ぶナス料理の程度なら、なんの心配もありません。
嫁の体が冷えることを心配した秋ナスの豊富にとれる農家のおしゅうとめさんの言葉だったのでしょうか。だとしたら、もう一つ秋ナスの栄養面での心配があります。ナスはビタミンやミネラルかほかの野菜ほど多くないのです。また秋口にとれるナスは、皮がいくぶん固めになっていることが多く、多量に食べると消化不良の心配もあるのです。
栄養分も少なく、多量に食べると体を冷やし消化不良の心配もある秋ナスを、やさしいおしゆうとめさんは、嫁に食べさせたくなかったのだとするのが二番目の解釈なのです。ほかに、秋ナスは種子が少ないことから、嫁が子宝に恵まれなくなるのを恐れたなどとする受け取め方もあります。
もう一つナスの持ち味なのですがアクが強いということがあります。調理の前に水にさらすことが多いのもこのためです。アクが強いと喉を痛めるという人もいます。ナスのアクと秋ナスの固い皮のことを考え合わせますと一度に多量に食べることは避けたほうが賢明といえましょう。
ナスの皮については、お請け物のときなどは鮮やかな青紫色になるので、上手に利用すれば消化不良どころか私たちの目を楽しませてくれるものになります。自分でお請け物をつくるときは、古くぎや焼きみょうばんなどを使うのが秘訣です。